yomoyama

よだかちゃんとの通話で生まれたロマンスたっぷり解釈のSSです#juju
本誌バレ注意⚠️

『あの空港に夢主がいたら』の話が楽しすぎたのと、よだかちゃんの「そう!眞子ちゃんのお話はロマンスがある!!」が嬉しかったのと、もしかしてロマンス盛り盛りでも許されるのでは!?🐣という思いで書きました。
あと「筆が早い」とも言ってもらったけど、マジで私の筆は勢いです。誤字脱字あったらすみません。慣れない三人称で読みづらいかもしれない……。後々、私自身の解釈が違ってきたら消すと思います!

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「……アイツは?」

 夜蛾をからかってケラケラ笑い、一息ついた五条がそう言ってあたりを見渡し始めたもんだから、夏油は笑った。今かい、と言いたい気持ちはグッと飲み込んでおく。

「さぁ。私は見てないよ」

 夏油がそう言い終わらないうちに、五条は立ち上がった。ポケットに手を入れるとそのまま歩みを進める。その懐かしい背中に、夏油はやはり笑いを堪えきれない。学生時代もよく見た光景だった。用があるわけでもないのに「アイツは?」と彼女を探す五条に「出た」と言ったのは家入だっただろうか。消去法で言えば家入だろうが、自分も言ったことがあるような気がした。それくらいよくあることだったのだ。
 変わらない親友の背中を見送っていると、夏油の笑みに気づいていないはずの灰原がいつもの口調であっけらかんと言う。灰原の声も昔と変わらず、よく通る気持ちの良い声だった。

「ああいうところ見ると、五条さんも一人の男なんだなって思います」

 どこか核心をついたような発言だが、もちろん灰原にそのようなつもりは一切はない。それでも固まってしまうのが夏油傑という男である。単純な話で、笑えるようで、笑えなかった。
 自分は、それが理解できていただろうか。理解しなかったのだろうか。理解したくなかったのだろうか。
 もちろん恋愛対象としては一ミクロンも掠らない。しかしながら、一人の男として生きる五条悟を、腹の底から知ろうとしていただろうか。五条悟だから最強なのか、最強だから五条悟なのか。そういった尺度で彼を表現して、ぶつけた自分は過去確かに存在するのだった。
 灰原の言葉に、眉間を寄せた七海が独り言のように呟く。実質、ああやって彼女を探しに行く五条を一番多く目にしたのは彼だろう。

「あれのどこが良かったんだ」

 もちろん「あれ」とは五条悟のことに他ならない。歯に衣着せぬ物言いに、夏油は笑った。きっとそんなのは誰にも分からない。自分が五条悟と言う男に最期まで驚かされたように。分からないから気が合って、分からないからああいった結末だったのかもしれない。たらればを言えばキリがないが、ただ一つ分かるのは「あれ」は死して尚、恋人のケツを追いかけているということだけである。家入が「無自覚ストーカーの才能あるよ」と言い放った青い思い出が蘇った。

「きっと、あの子にしか分からないんだよ」

 五条のピロートークなんて考えただけでも鳥肌ものだ。知りたくもない。知っているのは彼女だけだ。五条悟の一人の男としての実際を。価値を。その真髄を。

   □

 五条には六眼がある。にも関わらず、彼女の呪力は感知できなかった。改めて考えれば、先ほど邂逅した親友や後輩たちの呪力も果たして感知できていたのだろうか。よく分からなかった。妄想だから? 死んだから? と考えるも、その推理はひとまず置いておく。
 これが妄想でもそうでなくても、いるはずだと思った。
『故人』『見知った顔』と言うワードだけで脳内を検索したとしても彼女が検出されるのは極々当然なことである。十年という時を何だかんだと過ごしてきた。寮の部屋で、彼女の家で、様々な用途のホテルで。
 あの周辺にいなかった理由は分からないが、五条は必ずどこかにいると確信していた。だからポケットに手を入れたまま、悠々と歩みを進める。

   □

 何分経ったかも定かではない。五条が「こっちか?」を繰り返して行くと、手荷物受取所で彼女の後ろ姿を見つけた。何も載せず侘しく回っているレーンを、彼女はじっと見つめていた。
 ほんと馬鹿な、アイツ。と、五条は思う。
 ここがどういう場所か、彼女もおおよそ理解しているはずだ。何も載っていないレーンは、きっとこれからも何も運ばない。なのにああも馬鹿正直に待つ姿は、五条にとっては見慣れた景色のように感じられた。
 これが妄想か否かは分からない。ただ、少なくともこの世界は五条が中心である。現実世界においてもそのように比喩されたことがあるが、そうではなく、実質的に。五条空港と言っても過言ではないだろうと五条は考える。
 偉人、それこそ武将かよ。
 そんなふざけた思考を一瞬して、すぐ捨てる。

「……」

 五条空港は、五条による五条のための空港だろう。だとすれば、流れてくるか分からない荷物は恐らく五条の物だ。彼女は、五条の荷物をじっと待っているのだ。
 そう頼んだわけでもない。必要だとも思っていない。でも、彼女がそれを待つ姿に五条は「だろうね」と納得するしかなかった。そういう女だ。お節介と一言で片付ける人間もいるだろう。けれども、五条にとってはそういう馬鹿で居続ける彼女の根幹が一種の救いだった。不変な物などない。そうは分かっていても、彼女のそれは不変であると思う。だから僕は、結局そこに帰ってくるんだ、と。
 ポケットから手を出す。自分の掌が少し湿っていることに気づいて、一度大きく手を広げた。微量の汗が蒸発して、少し冷える。また軽く握る。
 五条が声を掛けようとした瞬間、彼女は振り返った。五条を視認してすぐに笑う彼女に、五条の口の端もどうしても上がってしまう。この制御の出来なさはどうしてなのか、五条にはついぞ理解が叶わなかった。ただそこに在ったのは紛れもなく、五条悟という男にとって唯一無二の一輪だった。



タイトルつけるとしたら『沙羅双樹』
私は割と頭の中の映像を文章にしているところがあるんだけど、夢主は28歳の姿をしておりました。だからみんなとは違う場所にいたんだと思います。
漫画にするなら最後のコマで二人の手を繋がせてほしい。何卒(誰向け?)

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